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地方議会と国会の違いとは?女性が政治キャリアをスタートする場所

近年、ニュースや新聞で「女性議員の割合」が話題になることが増えました。
しかし、世界的に見ると日本の女性議員比率はまだまだ低いのが現状です。
多様な視点が政策に反映されるためには、人口の約半分を占める女性の声がもっと政治に届く必要があります。

この記事では、「政治家になりたい」と考える女性がキャリアの第一歩を踏み出す上で知っておきたい「国会」と「地方議会」の違いを分かりやすく解説します。
そして、なぜ多くの女性にとって「地方議会」がキャリアのスタート地点として注目されているのか、その理由と具体的な道筋を探っていきます。

「国会」と「地方議会」基本のキ

政治の中心には、国民や住民の代表者が集まって議論し、物事を決定する「議会」があります。
この議会は、国レベルの「国会」と、都道府県や市区町村といった地域レベルの「地方議会」の2つに大別されます。

そもそも議会とは?国民・住民の代表が集まる場所

議会とは、選挙で選ばれた議員が集まり、法律や予算、地域のルールなどを話し合って決める場所です。
議員は、私たち国民や住民の声を政治に届けるための「代表者」です。
国や地域がより良くなるように、様々な課題について議論し、意思決定を行う重要な役割を担っています。

国会:国のルールを決める最高機関

国会は、東京の国会議事堂で開かれる、国の政治の中心です。
日本国憲法で「国権の最高機関」であり、「国の唯一の立法機関」と定められています。
これは、国の機関の中で最も重要な位置にあり、国の法律を作ることができるのは国会だけ、という意味です。

国会は「衆議院」と「参議院」の二つの議院で構成されており、これを「二院制」と呼びます。
二院制には、慎重な審議を行ったり、国民の多様な意見を広く反映させたりする利点があります。

地方議会:地域の暮らしに密着したルールを決める機関

地方議会は、都道府県や市区町村ごとに設置されている議会です。
例えば、「東京都議会」「横浜市会」「〇〇町議会」などがこれにあたります。
その地域に住む住民の代表として選ばれた地方議員が、地域の課題解決や住民福祉の向上のために活動しています。

一目でわかる!国会と地方議会の7つの違い

国会と地方議会は、どちらも民意を反映させる重要な機関ですが、その役割や仕組みには明確な違いがあります。
ここでは、7つのポイントに絞って具体的に比較してみましょう。

比較項目国会地方議会
① 役割と議論するテーマ法律の制定、国の予算、条約の承認など条例の制定、地域の予算、公共サービスの決定など
② 組織の仕組み議院内閣制(国会議員の中から総理大臣を選ぶ)二元代表制(首長と議員を住民が直接選ぶ)
③ 議員の種類と数衆議院議員(465人)、参議院議員(248人)都道府県議会議員、市区町村議会議員(定数は条例で定める)
④ 開催される時期と頻度通常国会は年1回(1月〜6月頃)など、ほぼ年中開催定例会が年4回(3,6,9,12月)が基本
⑤ 影響力の範囲全国その地域内
⑥ 予算の規模国家予算(約100兆円規模)各自治体の予算(規模は様々)
⑦ 議員になるためのハードル被選挙権年齢が高い、選挙費用が高額被選挙権年齢が低い、選挙費用が比較的安い

違い①:役割と議論するテーマ(法律 vs 条例)

最も大きな違いは、そこで作られるルールの種類です。

  • 国会が作るのは「法律」
    法律は、日本全国で適用されるルールです。 刑法や民法、税金の仕組みなど、国民生活の根幹に関わる事柄を定めます。
  • 地方議会が作るのは「条例」
    条例は、その地方自治体の中だけで適用されるルールです。 例えば、ごみの分別ルール、公園の利用規則、子育て支援策など、地域の特性に応じたきめ細やかなルールを定めます。 条例は、法律の範囲内で制定されなければなりません。

違い②:組織の仕組み(議院内閣制 vs 二元代表制)

政治の仕組みも大きく異なります。

  • 国会は「議院内閣制」
    国民は選挙で国会議員を選びます。そして、国会議員の中から内閣総理大臣が指名され、内閣が組織されます。 つまり、行政のトップである内閣は、議会の信任に基づいて成立しています。
  • 地方議会は「二元代表制」
    住民は、「首長(都道府県知事や市区町村長)」と「地方議会議員」の両方を、それぞれ別の選挙で直接選びます。 首長(行政側)と議会(議決側)が互いに対等な立場で、チェックし合いながら地域の運営を進める仕組みです。

違い③:議員の種類と数

議員の種類や定数も異なります。

  • 国会議員
    衆議院議員(定数465人)と参議院議員(定数248人)がいます。
  • 地方議会議員
    都道府県議会議員、市議会議員、町議会議員、村議会議員などがあります。議員の定数は、各自治体が条例で定めています。

違い④:開催される時期と頻度

議会が開かれている期間も違います。

  • 国会
    毎年1月に召集される「通常国会」の会期は150日間です。 その他にも「臨時会」や「特別会」があり、実質的にはほぼ一年中活動しています。
  • 地方議会
    多くの自治体では、3月、6月、9月、12月の年4回「定例会」を開くのが一般的です。 必要に応じて「臨時会」が開かれることもあります。

違い⑤:影響力の範囲(全国 vs 地域)

国会での決定は日本全国に影響を及ぼしますが、地方議会の決定はその地域内に限定されます。
国の安全保障や外交、経済政策といったマクロな視点が求められるのが国会であるのに対し、地方議会では、地域のインフラ整備や教育、福祉といったミクロで身近な課題が中心となります。

違い⑥:予算の規模

扱う予算のスケールも全く違います。
国の予算は100兆円を超える規模ですが、地方自治体の予算は人口や経済規模によって大きく異なります。
例えば、東京都の予算は国の省庁レベルに匹敵する巨大なものですが、小さな村では数億円規模ということもあります。

違い⑦:議員になるためのハードル

政治家を目指す上で、立候補のしやすさにも違いがあります。

  • 国会議員
    被選挙権(立候補できる権利)は、衆議院議員が満25歳以上、参議院議員が満30歳以上です。選挙区が広く、選挙運動にかかる費用も高額になる傾向があります。
  • 地方議会議員
    都道府県議会議員は満30歳以上(市区町村長と同じ)、市区町村議会議員は満25歳以上で立候補できます。選挙区が比較的狭く、国政選挙に比べて費用を抑えて挑戦することが可能です。

女性が政治キャリアをスタートするなら、なぜ地方議会が注目されるのか?

ここまで見てきた違いを踏まえると、女性が政治家としてのキャリアをスタートさせる場所として、地方議会には多くのメリットがあることがわかります。

理由①:暮らしに身近な課題を政策に反映させやすい

子育て、介護、教育、地域の安全、働き方といったテーマは、多くの女性が日常生活の中で直面する課題です。
地方議会は、まさにこうした暮らしに密着した問題を取り扱う場所です。
自身の経験や問題意識を、地域のための具体的な「条例」や「予算」という形にしやすいのが大きな魅力です。

例えば、待機児童問題に悩んだ経験から、保育所の増設や病児保育の充実を議会で提案する。
地域の防犯に不安を感じ、街灯の設置や防犯パトロールの強化を求める。

このように、生活者としての視点をダイレクトに政治に活かすことができます。

理由②:国政に比べて立候補へのハードルが低い

前述の通り、地方議員選挙は国政選挙に比べて、被選挙権年齢や選挙費用といった面で挑戦しやすい環境にあります。
特に市区町村議会議員選挙は、選挙区が自分の住む地域であるため、地盤や知名度がなくても、地域活動などを通じて有権者に顔と名前を覚えてもらいやすいという利点があります。

理由③:多様な働き方が可能になりつつある

国会議員は東京での活動が中心となり、多忙を極めますが、地方議員は自分の住む地域で活動するのが基本です。
議会は定例会が中心で、会期中以外は比較的時間を調整しやすい側面もあります。
近年では、オンラインでの委員会参加を認めるなど、育児や介護と両立しやすい環境整備を進める議会も増えてきています。

理由④:地域での実績が国政へのステップアップにつながる

地方議員として地域のために汗を流し、住民からの信頼を得て実績を積むことは、将来的に国政を目指す上での大きな礎となります。
地域の課題を深く理解していることは、国会議員になった際に、より現場感覚のある政策立案に繋がるでしょう。
実際に、多くの国会議員が地方議員としての経験を持っています。

女性が政治家を目指す上での課題と乗り越え方

一方で、女性が政治の世界に飛び込むには、依然としていくつかの壁が存在します。

課題①:固定的性別役割分担意識とハラスメント

「政治は男性の仕事」といった古い価値観や、有権者や他の議員からのハラスメントは、女性の政治参画を阻む大きな要因です。
選挙活動中に性的なヤジを受けたり、議会で女性蔑視的な発言にさらされたりするケースも報告されています。

課題②:家庭との両立の難しさ

夜の会合や週末のイベント参加など、政治活動は時間的に不規則になりがちです。
家事・育児・介護の負担が女性に偏りがちな現状では、家庭との両立が大きな課題となります。

課題③:政治資金とネットワーク

選挙には資金が必要です。また、政治活動を進める上では、地域の有力者や支援者とのネットワークも重要になります。
こうした資金や人脈の面で、男性に比べて不利な状況に置かれる女性も少なくありません。

乗り越えるためのヒント:支援団体やロールモデルを見つけよう

これらの課題は一人で抱え込む必要はありません。
近年、女性の政治参画を支援する団体が増えており、立候補のノウハウを学ぶ勉強会や、候補者同士のネットワーク作りの機会を提供しています。

また、現役の女性議員の活動をSNSでフォローしたり、議会を傍聴したりして、ロールモデルを見つけることも有効です。
例えば、ニュースキャスターから参議院議員へと転身し、現在は作新学院の理事長として教育分野でも活躍する畑恵氏のようなキャリアパスも参考になります。
畑恵氏をはじめ、多くの女性政治家がどのように課題を乗り越え、活動しているかを知ることは、大きな勇気とヒントを与えてくれるでしょう。

まとめ:あなたの一歩が、未来の政治を創る

国会と地方議会には、それぞれ異なる役割と魅力があります。
特に地方議会は、私たちの暮らしに最も身近な政治の舞台であり、女性が生活者としての視点を活かし、キャリアをスタートさせるのに適した場所と言えるでしょう。

もちろん、政治の世界は決して簡単な道ではありません。
しかし、多様な声が反映される政治を実現するためには、より多くの女性が挑戦することが不可欠です。
この記事が、あなたの「政治家になりたい」という想いを後押しし、具体的な一歩を踏み出すきっかけになれば幸いです。