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塗布ロボットと組み合わせるときの吐出タイミングの詰め方

生産技術の仕事をしている三宅亮介です。
電子部品メーカーで18年、基板のコーティングやポッティングといった塗布工程の立ち上げを担当してきました。

ロボットとディスペンサをつないだあと、必ずと言っていいほど出てくるのが「ティーチング通りに塗れない」という相談です。
始点に液が溜まる、コーナーだけ太い、終点が細く尻すぼみになる。
この記事では、その原因の切り分け方と詰め方を整理します。

「タイミングがずれる」は3つの問題が混ざっている

現場で「タイミングがずれる」と呼ばれている現象は、たいてい別々の3つが混ざっています。

  • 信号の遅れ:吐出ON/OFF信号がPLCを経由するときの応答のずれ
  • 液の遅れ:エア圧の立ち上がり、粘度、混入した気泡による吐出そのものの遅れ
  • 軌跡の問題:ロボットの加減速やコーナーでのオーバーシュート

ここを分けずに信号のディレイだけをいじると、直ったように見えて別の条件で再発します。
まずどれが主因かを見極めてください。

ロボット側は「軌跡重視」か「速度重視」かで挙動が変わる

意外と知られていないのが、ロボット側の教示設定です。
兵神装備の技術コラムでは、教示点を正確に通る代わりに速度が変動する軌跡重視のパターンと、速度は安定するが軌跡がずれる速度重視のパターンがあり、高速塗布と小半径の軌跡は両立しないと説明されています。
直交型がコーナーでオーバーシュートしやすい点にも触れられています。

つまりコーナーで塗布量が集中するのは、多くの場合ディスペンサではなくロボットの減速が原因です。
対処は次の2段階で考えます。

  • パターン切替:速度域ごとの吐出流量をあらかじめ教示しておく
  • 完全同調制御:ロボットの速度信号を受け取り、それに同期させて吐出流量を制御する

工数と予算が限られるなら、まずはパターン切替で十分に追い込めます。

吐出方式によって「詰められる幅」が違う

吐出方式ごとに、量の決まり方が異なります。

方式吐出量の決まり方
エアシリンジ方式空気圧をかける時間で調整する
バルブ式タンク圧力とバルブの開閉時間で調整する
プランジャ方式・ポジロード方式計量室の容積とストロークで決まる
スクリュー方式スクリューの回転量で決まる

時間で量を決める方式は、エア圧の立ち上がりと立ち下がりがそのまま吐出の遅れになります。
一方の容積計量方式は、モータの位置決めで量が決まるため粘度変化の影響を受けにくい構造です。
ロボット搭載を前提に機種を比較するなら、2液型ディスペンサーで塗布に使える装置の一覧ページで方式と重量を見比べておくと選定が早くなります。
ヘッドに載せる以上、本体重量は可搬質量の余裕、ひいては加減速性能に直結します。

もうひとつ見落としやすいのが気泡です。
液の中に気泡が混ざっていると、ノズルから液が出ないタイミングが発生します。
1ショットごとに量がばらつく、たまに空打ちのようになる、といった症状が出たら脱泡の状態を疑ってください。

温度と粘度は「タイミングの問題」に化ける

朝一番の1個目だけ塗布量が違う、という現象に心当たりはありませんか。
これはタイミングの問題ではなく、温度起因の粘度変動であることが多いです。

液体の粘度は温度が下がると高くなります。
タンクでは適正でも、ポンプやホースを流れる間に液温が下がれば、吐出されにくくなって立ち上がりが鈍ります。
タンク、ポンプ、ミキサにヒーターを後付けして液温を保つだけで、症状が消えるケースは珍しくありません。

信号のディレイをいじる前に、液温を測ってみてください。

ティーチングの追い込みは法令上の「教示等」にあたる

吐出タイミングの調整は、ロボットの可動範囲内で教示を繰り返す作業になります。
これは労働安全衛生規則第150条の3が定める「教示等」に該当し、作業規程の整備、異常時に直ちに運転を停止できる措置、作業中である旨の表示といった措置が事業者に求められます。
条文はe-Gov法令検索の労働安全衛生規則で確認できます。

なお、産業用ロボットの導入自体は今も伸びています。
受注や出荷の推移は日本ロボット工業会の年間統計で公開されているので、社内で自動化を提案するときの裏付けに使えます。

まとめ

吐出タイミングの追い込みは、信号・液・軌跡のどこに原因があるかを切り分けるところから始まります。

  • コーナーの塗布量集中は、まずロボットの加減速を疑う
  • 立ち上がりの鈍さは、吐出方式と液温の両面から見る
  • 教示作業は安全規程の対象であることを忘れない

数値の目安は液種と装置で変わるため、最後は実液でのテストが確実です。
装置メーカーのテストルームで自社の材料を試せる場合もあるので、選定段階で相談してみてください。